横隔膜ヘルニア
概要
横隔膜ヘルニアは、横隔膜という呼吸に重要な、胸部と腹部を隔てている筋肉に欠損孔があり、そこを通り抜けて腹部の臓器が胸腔内へ入り込む疾患です。
生まれつきの先天性の場合、胎児期の肺や血管の発育が妨げられ、出生直後から重篤な循環・呼吸障害を起こします。先天性横隔膜ヘルニアの多くは胎児期に診断され、新生児集中治療を要する疾患です。生後しばらくしてから発症する後天性(遅発性)横隔膜ヘルニアでは消化器症状が主にみられます。
症状
先天性では出生直後から以下の症状がみられることがあります。
- 強い呼吸困難
- チアノーゼ(皮膚や唇が紫色になる)
- 呼吸音の左右差
- ビア樽のように張り出した大きな胸
- 凹んだ細い腹部
重症度は個々の症例で異なります。
一方、後天性では腸閉塞に伴う腹部膨満、腹痛、便秘、嘔吐など、消化管の通過障害に伴う症状がみられるのが特徴です。
診断/検査
- 出生前:胎児超音波検査、胎児MRI検査
- 出生後:胸部X線検査、超音波検査、造影CT検査
肺や血管の発育状況や、横隔膜欠損孔の位置や大きさ、胸腔内に陥入した腹腔内臓器の評価を行い、重症度の判定を行います。
治療
出生後はまず集中治療室にて数日間呼吸・循環の安定化を最優先とします。
全身状態が落ち着いた段階で、横隔膜の欠損部を修復する手術を行います。
手術には開腹手術・胸腔鏡手術が状況に応じて選択されます。
当院ではほとんどの症例で、傷が小さく体の負担が少ない「胸腔鏡手術」を積極的に行って良好な成績を出しています。
予後/見通し
先天性横隔膜ヘルニアは全国的に救命率が70%前後となっており、新生児外科疾患の中でも極めて予後の悪い疾患です。出生時の欠損孔の大きさ、肺や血管の発育状態や合併奇形の有無などによっても予後は異なりますが、近年では適切な新生児集中治療と最先端の外科治療により、長期生存が期待できる症例も徐々に増えてきています。後天性(遅発性)横隔膜ヘルニアでは、ごく稀に、嵌頓した消化管が破裂してしまい、重篤なショック状態で緊急手術になるような予後の悪い症例を経験しますが、一般的には上述の消化器症状から早めに診断がつき、ほとんどの症例で予後良好な経過となっています。
横隔膜ヘルニアの重症度は個人差が大きく、一概にご説明することができません。当院ではセカンドオピニオン外来も設置しており、先天性横隔膜ヘルニアについての研究実績が豊富な教授の土井または准教授の中村が丁寧に対応させて頂きますので、いつでもお気軽にご相談くださいませ。
臍帯ヘルニア
概要
臍帯ヘルニアは、胎児期に腹壁が閉じきらず、本来腹腔内に収まるべき肝臓や消化管が、拡大した臍輪から臍の緒の中に脱出した状態で出生してしまう疾患です。臓器は臍の緒の膜である羊膜で覆われています。
症状
- 胎児超音波による出生前診断
- へその部位に袋状の突出
- 内容物が透けて見える
といった所見がみられます。
診断/検査
出生時の外観で診断されます。最近では、胎児診断される症例も増えています。
併存疾患の有無を確認するため、全身評価を行います。
治療
大きさや全身状態に応じて、
- 一期的手術
- 段階的治療
を選択します。
予後/見通し
臍帯ヘルニアの大きさや脱出する臓器の有無によって経過はさまざまですが、
適切な治療により良好な経過をたどる例も多くあります。当院小児外科教授の土井は臍帯ヘルニアの研究で多くの英語論文の執筆をしています。本疾患でお悩みの際には、是非当院小児外科の教授外来へご相談くださいませ。
鎖肛または直腸肛門奇形
概要
鎖肛は、肛門が正常に形成されていない先天性疾患です。
肛門が完全に閉じている場合や、尿路・生殖器と異常につながっている場合があります。
症状
- 生後に便が出ない
- お腹の張り
- 肛門がない
- 肛門の位置がずれている
- 尿に便が混じる
- 膣から便が出る
重症度により症状は異なります。
診断/検査
- 視診による肛門部の確認
- X線・超音波検査
- 下部消化管(注腸)造影検査
- 合併奇形(心奇形、食道閉鎖、腎奇形、橈骨奇形、椎体異常など)の検索
治療
低位鎖肛に対しては一期的に経会陰式肛門形成術を行います。
中間位・高位鎖肛に対しては、人工肛門造設を行ってから二期的に肛門形成術を行います。通常他院では人工肛門のまま退院し、数か月間は御両親に人工肛門管理をして頂きながら体重増加を待った後に肛門形成術を行い、その後に人工肛門閉鎖術を行うという流れが一般的です。しかしながら当院では、人工肛門造設から肛門形成術および人工肛門閉鎖術に至るすべての外科的治療を新生児期に行うことで、退院してから自宅での人工肛門管理が不要となっており、御両親に大変好評を得ています。
予後/見通し
術後合併症として肛門狭窄や便漏れがありますが、多くの場合には成長発育に伴う改善が見られ、社会生活に順応できるケースが多い疾患です。上記の当院での新しい治療方法に御興味がありましたら、お気軽に当院小児外科外来までお問合せくださいませ。
先天性小腸閉鎖
概要
先天性小腸閉鎖は、小腸が途中で途切れている、または狭くなって閉鎖している先天性疾患です。胎児期の血流障害などが原因と考えられています。
症状
- 生後早期からの嘔吐
- 腹部膨満
- 便や胎便が出ない など
診断/検査
- 腹部X線検査
- 超音波検査
- 注腸造影検査
腸閉塞の程度を評価します。
治療
治療は外科手術です。閉鎖部の口側と肛門側とで腸管の口径差が大きい場合には、まず口側の拡張腸管を一時的に人工肛門として減圧を図り、肛門側腸管との口径差を小さくした後に、腸管吻合を行います。口径差がそれほど大きくない場合には、人工肛門造設をせずに、一期的に腸管吻合することがあります。
予後/見通し
残った腸の長さや合併症により経過は異なりますが、
多くの症例で静脈栄養を離脱し、経口摂取による成長発育が期待できます。

